鮮やかな水色の色調と、不透明な独特の質感はターコイズのような貴石がイメージされているようです。胎はやや厚さの感じられる重厚な作りになっています。面取はあえて角を立たせすぎず、力強さと優美さを兼ね備えた一品です。底部には「乾隆年製」の刻銘が彫られています。
清朝になると、中国のガラス工芸は西洋ガラスの技法が導入されたことで発展を見せます。特に18世紀乾隆年間には宮中工房で数々の名品が作られ、本作のように官銘が入った作例が遺されていることから「乾隆ガラス」という呼称も生まれました。しかし、無銘の作品に後から乾隆銘を刻んだものや、後の時代に作られたものに偽銘を刻した作例なども多量にあり、本当の「乾隆ガラス」を判断するのは大変難しい問題となっています。
本作を見ると底面の大きさに比して銘の占める割合が大きく、堂々とした良い銘です。後の偽銘と思われるものは、銘が小さく、弱々しい印象のものが多い印象です。絶対的ではないとしてもこの点は判断の基準の一つと思われます。