12世紀頃に鈞窯でつくられた澱青釉の杯です。口縁がわずかにすぼまる衒いのない造形の柔らかな雰囲気の一品です。鈞釉とも呼ばれるこの窯独特の失透性の釉薬が総体に施され、天青という中国での呼び名の通り涼やかな青空を思わせる釉色を呈しています。高台も小さいながら端正で、土見せとなっている畳付きも美しく処理され、釉薬が薄い部分からは胎土が透けて見えています。
鈞窯は宋時代の名窯の一つに挙げられていますが、紀年墓などからの年代が確実な出土品は知られず、また北宋の雰囲気を纏う作風のものも数が限られているため、生産隆盛期は金時代から元時代にかけてだろうと云われています。本作は釉に見られる気泡の細かやかさや控えめな窯変、シンプルな器形から金時代初期の作と考えられます。