藤岡了一(1909〜1991年)箱書.
Box inscription by Fujioka Ryōichi (1909–1991).
4~5世紀、東晋の作と考えられる青磁碗です。青磁は漢代の末頃に技術的な完成を見たとされますが、その後魏晋南北朝時代に更なる発展を迎え、多種多様な器形と艶やかなガラス質の釉を手に入れました。この時期の作例を日本では広く「古越磁」と呼称しています。まさに本作はその発展の時代の青磁で、淡く青く透明感を有した釉は美麗なものとなっています。碗なりの柔らかい器形も陶器ならではの造形で、やきものとしての魅力を備えています。また古越磁は線刻や印花による加飾が主流ですが、東晋頃より青磁の新たな加飾法として鉄斑文が併用されます。より装飾的で華やかな青磁となったと云えます。
古越磁は陶磁のおける南朝文化の成熟の賜物であり、まさに東晋は書聖・王羲之や、画聖・顧愷之、また詩人・陶淵明の生きた時代とも重なります。一見素朴なようでありながら、どこか優雅な南朝貴族文化の風をも感じることができる古越磁の美質はもっと高く評価されるべきでしょう。
陶磁研究者の藤岡了一(1909〜1991年)氏の箱書が付随しています。