「愛知中国古陶磁研究会第1回展覧会 青磁を楽しむ」愛知陶磁資料館, 2004年, no. 37.
Pleasure of Chinese Celadon, from Private Collections in Japan, Aichi Prefectual Ceramic Museum, Seto, 2004, no. 37.
重厚な胎の上に、優美な牡丹の彫花がなされた合子です。蓋上に凸線を巡らす点や、高台が高さのあるやや外開きの撥高台にする点などは、宋時代の銀器などに範を取った造形であると云えます。浮き出るような牡丹文を仔細に見ると、リズミカルな箆彫の太い線で花弁の輪郭を取り、各花弁には針のような細い線で筋が表現されるなど、牡丹の立体感を感じさせる実に魅力的な意匠となっています。牡丹は大輪を咲かせる富貴の象徴、百花の王であり、北宋期の工芸品に共通して見られる吉祥の図様です。
越州窯は漢代より続く、初めて本格的な青磁を産した名窯です。のちに隆盛した龍泉窯青磁のように一見して分かる明快な青磁ではないかもしれませんが、良い越州窯作品は釉薬の奥に必ず若葉のような微妙な青みを帯びています。落ち着きがあり、しっとりとした深い青緑色は青磁の歴史におけるひとつの頂点と云ってよいでしょう。
本作は愛知陶磁資料館(現愛知陶磁美術館)で開催された、青磁をテーマとした中国陶磁展に出陳されています。