元時代14世紀頃の龍泉窯で焼成された双耳のつく青磁の小壺です。厚みのある頸部の左右に小さな環状耳がつき、巡線に区画された胴の上部には菊と蓮葉文が、腰部には鎬蓮弁文が施されています。無釉の底部はベタ底で胎土の赤味が見て取れます。浮かび上がるようないっちん描きによる文様が小振りなサイズと相まって愛らしい一品です。
1976年、韓国の沖合で沈没船が発見されました。新安沈没船と呼ばれるその船は、1323年に中国の寧波を出港し日本の博多へと向かう貿易船で、元時代の陶磁器や銅銭、香辛料など多彩かつ多数の荷物を積載していました。その中でも陶磁器の積載数は突出して、2万点以上に昇り、その約半数が龍泉窯の青磁でした。日本では鎌倉時代に龍泉窯の青磁が愛好されていたと云われていますが、この沈没船の発見とその後の研究は、それがどれほどのものであったのかを具体的に明らかにしました。
本作に類似する小壺を始めとする龍泉窯青磁の小品も新安沈没船から多数発見されており、鎌倉時代の武士や寺院などの上層階級の人々が愛玩していた青磁の美質をお手元で是非お楽しみください。