南宋官窯もしくは哥窯作品に倣って清朝で制作された管耳瓶です。写しとはいっても単なるコピーのレベルに留まらず、中国古器物の持つ美質や技術を咀嚼し、そこに清朝の気分を加えた「倣官窯」という一分野を生み出したことは特筆に値します。表面的な色彩などの部分だけでなく、器体の重厚さや細部までの意識、そしてその奥の精神性までに踏み込んでいるために作品として成立していると思われます。
元になった南宋官窯や哥窯の青磁は、粉青色の明るさの中にやや影を感じさせる重厚な色調が特徴です。そのオリジナルの雰囲気は本作に於いてもよく再現されています。貫入は元来焼成時に自然に発生したものでありましたが、本作ではある程度意図的にそれを発生させ、器物全体を強い黒線と朱に近い淡い色の貫入によって覆わせた一種の文様としての効果を持っていると云えます。宋官窯の特色とされる「鉄足」つまり黒い素地を再現している点も見逃せない点でしょう。