康熙五彩と呼ばれる、清の康熙年間につくられた五彩のカップ&ソーサーです。美しい白地に明るい五彩の絵付けが映える一品です。杯、托ともに輪花形に成形され、口縁には鉄釉による口紅が施されています。垣に囲まれた空間に瓶に活けられた花が飾られ、その周囲に巻物や如意、杯などがランダムに描かれている文様は、あたかも仙境における宴のようです。外周部には赤い格子と宝珠のような文様、高台内には二重圏線に兎が描かれています。鮮やかな色彩で描かれる吉祥文が大変華やかで愛らしい作品です。
いわゆる明末清初と云われる17世紀の頃から、東インド会社による中国陶磁の輸出が盛んになりました。当初は青花磁器が主流でしたが、康熙年間に入ってからは本作のような康熙五彩のものが数多く欧州に向けて輸出されました。ことにカップ&ソーサーは、ヨーロッパの王侯貴族の間で紅茶が流行していた時流をいち早く取り入れてつくられたもので、当時の輸出陶磁の中では主力商品となっていました。本作のような把手がないカップのものは、その中でも早い時期につくられたものとなります。