唐時代、盛唐期に焼造された猪(豚)形の俑です。猪は古来より一般的な家畜で、既に漢時代には副葬品として俑が作られました。これは死後の世界でも生前と同じ暮らしが続くという思想に基づきます。猪形の陶俑は唐代に至るまでも連綿と製作され、本品も墳墓に埋葬された明器と推察されます。
釉薬には褐色を呈する鉛釉を施し、低火度で焼成されています。低火度鉛釉の技術は紀元前から存在しますが、南北朝時代以降、明るい色の胎土を用いることで、より鮮明な発色が可能となりました。本作にも白色系の胎土が使用され、透明感ある琥珀色の釉色を呈しています。さらに釉の劣化が少なく、本来の艶やかな光沢をお愉しみ頂けます。また、本品は型成形ながら、モデルの要点を掴んで小品に落とし込む造形力が見て取れます。頭を傾げ、ややうねらせた背筋の優美な曲線、そしてまるまると肥え膨らんだ腹部には、大らかさや豊満さといった、盛唐期の美意識が反映されています。
どの角度からの鑑賞にも耐え得る、可愛らしく見飽きない佳品と云えます。是非お手にとってご覧いただきたい作品です。