肩から底面へとなだらかに弧を描く胴部に、短い注口がつく白磁の水注です。9世紀、晩唐の頃につくられたと考えられます。把手上部に獅子頭部がつき、注口の根元には細かい刻線を巡らせた円形貼花が嵌められています。それ以外には装飾が施されていないシンプルさが、却って磁胎のきめ細かさと温かみのある白色を際立たせています。高さ9センチに満たないミニチュアですが、通常サイズの水注を忠実に模したプロポーションと丁寧な作行により、実寸以上の存在感を醸し出しています。
把手の獅子は鬣の形状から中国美術でよく見られる獅子というよりもライオンのように見受けられます。そこには古くはアッシリア、ペルシアの頃から脈々と継承されていた西域文物の影響が看取され、東西の交流が盛んだった唐時代の風を纏う一品となっています。