三つの耳の付いた白釉の壺です。隋時代頃の作と考えられます。白磁は隋に先立つ北朝期に完成を見ることとなりますが、それに伴い白いやきものへの希求が高まります。本作は厳密に云うと白磁ではなく、灰色の胎土上に白い化粧土を掛けた白釉陶器ですが、その奥には純然たる白磁がイメージされています。
器全体は重厚な作りをしており、三耳も二本の帯が重なったような太く力強い造形です。釉薬はガラス質が強く透明感があり、白化粧の柔らかい質感と相まって器上に爽やかで優しい印象を加えています。この滝のような釉薬の流れは元来自然発生的なものですが、鑑賞としては変化に富んだ見どころの一つとなっています。
北朝から隋代の陶磁器は、前時代の古越磁のような器物に新風が吹き込まれ新しいものが生まれる時代の生命感を有しており、不思議な魅力のあるやきものと云えるでしょう。