胴の張り出した瓶に龍形の双耳がついた大型の白磁の瓶です。頸部や盤状の口縁、肩上部や頸部に入る3本の圏線と大変シャープな造形で、頸に添う双龍の首は細長く繊細なつくりとなっていす。一方、シンメトリーに整った胴部には豊かな張りがあり、頸部と胴部が対照的ながらバランスのとれた造形となっています。龍耳瓶の中には龍頭部の造形が崩れて面貌がはっきりしないものも見受けられますが、本作は龍が立体的で目や口元まで丁寧に表現され、本作に水をたたえると双龍がまるで水を口に含んでいるように見えます。白磁が腰まで施された釉は、どころどころ小さな剥落が見られますが、大変滑らかで均一に施釉されたことがうかがわれます。
龍耳瓶は、隋から初唐にかけて大変流行した器形で、白磁のみならず三彩でも作られていました。その祖型は古代ギリシアのアンフォラだと云われています。唐時代は国際色豊かだったことで知られています。そうしたやきものが人気となるところにも、ヘレニズムの影響が強い唐代の東西交流の形跡が看取されます。