伸びやかで洒脱な鉄絵文様が印象的な馬上杯です。描かれているのは草花文または鳥文と思われますが、ここでは文様が何かということよりも、その筆彩の勢いとリズムそのものを楽しむべきでしょう。見込みは外と比べてシンプルな二重の圏線のみで、内外の対比も面白く感じられます。高杯のように脚部が細く高くなった杯は、馬上にて杯を傾ける際に適したものと言われており、元時代頃に流行した器形です。
磁州窯では加飾技法として、北宋期には彫刻的な搔き落とし技法を、金時代以降には鉄絵が中心になっていきます。そこからさらに推し進めて、元時代の磁州窯は絵画的で平明な魅力を獲得していると云えます。
やや大ぶりですが、実際に酒器としても用いてみたくなる一品です。