Alfred(1873~1950年)and Ivy(1890~1976年)Clark 旧蔵.
Alfred (1873–1950) and Ivy (1890–1976) Clark Collection.
弘治黄釉の佳品です。中国陶磁の単色釉磁は色と形を極限まで突き詰めた、陶磁器の純粋な魅力を有しています。様々な色釉が存在する中で黄釉は皇室の祭器としても用いられる非常に格調高いものであり、特に明代の弘治年間のものは、歴史上最も優れた黄釉のひとつと云えます。弘治官窯の作品はみずみずしい透明感がありながらも、その釉は奥に黄色の濃厚さが共存した特徴的な釉調で、弘治のものは銘を見ずとも判別出来るほどその美質が優れています。
さらに重要な形状ですが、弘治のものは非常に上質です。作品を見ると全体に緊張感のあるラインで、優れた骨格を持つことが分かります。端反りになった口縁の鋭さ、口縁へと至るカーブの滑らかな美しさには胎への意識の高さがよく表れています。明初期の力強さ、明後期の華やかさに挟まれた明中期の弘治年間は強さと繊細さを兼備した時代であることが本作から看取されるでしょう。
旧蔵者Alfred Clark(1873~1950年)は英国の蒐集家で、妻Ivy(1890~1976年)と共に20世紀の最も重要なコレクターの一人と云えます。非常に質が高い洗練されたコレクションの中で、特に明代官窯作品の一群のクオリティは様々な個人コレクションの中でもトップクラスと思われます。本作はその欧州一流のオールドコレクションらしい雰囲気を持つ名品と云えるでしょう。