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黄釉加彩駱駝俑

初唐(7世紀)
高 37.3 cm

出展

「中国美術展シリーズ 3 隋唐の美術」大阪市立美術館, 1976年, no.1~241.


所載

大阪市立美術館編『隋唐の美術』平凡社, 1978年, 図版 181.




Early Tang (7th century)
H. 37.3 cm

EXHIBITED

Chūgoku Bijutsuten series 3: ZuiTō no Bijutsu, The Osaka Municipal Art Museum, 1976, no. 1〜241.


LITERATURE

Osaka Municipal Art Museum, ZuiTō no Bijutsu, Heibonsha, 1978, pl. 181.






唐初期の駱駝俑です。黄味を帯びた釉薬を掛け、その上に顔料でもって加彩を施す「黄釉加彩」という技法の作品です。六朝以前の俑は、秦の始皇帝陵の「兵馬俑」などのように陶器に色を付けた加彩が主流でしたが、さらにそこへ釉薬の持つ透明感や華やかさを加えたいという発想でこの技法が創始されたのでしょう。黄釉加彩の俑は、北魏以来の厳しく繊細な造形の流れを汲み、その造形上に施釉されているために、のちに隆盛する唐三彩俑などと比して彫刻的要素の強いしっかりとした骨格が感じられるのが特徴です。クラシカルな要素と新しい美意識が絶妙に共存した、俑史上でも画期的なタイプと云えます。当時はかなりの数が作られたようですが、唐が繁栄を極めることと軌を一にして華やかな色彩への希求が高まったことで、唐三彩が発展すると黄釉加彩は姿を消していくことになりました。

駱駝俑は北魏の頃から見られるように、東西交易の象徴的な動物として制作されたと考えられます。本作もシルクロードを行き交うキャラバンの一頭でしょう。やや上を見上げ、力強い頸部をした堂々たる立ち姿です。背負った大きな荷物に目を移すと、虎のような毛皮で覆われた様子は彩色で示され、また立体的には水筒、兎や鳥といった食料までも表現されるなど、高い造形力が感じられます。この手の黄釉加彩の欠点として、釉上に加彩をするため剥落しやすい点が挙げられますが、本作は現存する同種の作例の中でも非常にコンディションが良く往時の華やかさを感じることができる優品と云えるでしょう。

この駱駝俑は、1976年に大阪市立美術館で開催された「中国美術展シリーズ3 隋唐の美術」に出陳されています。このシリーズ展示は、漢時代から清朝へ至る中国美術を5期に分け、陶磁、金工、書画、染色など様々な分野の美術品を一堂に介し、その時代性や美術性を通観しようとした展覧会で、当時日本に将来されていた名品が数多く出陳されています。本作も上記のような造形性の高さ、状態の良さによって出陳の選定がなされたと思われます。